リボンズが第二期ラスボスなら? 最終話付近で勝手に超展開。
この話の前提あらすじは0をご覧ください。
拍手、ありがとうございました! 連休中に視聴も追い付きました。ワンマンアーミー強いけど勝手すぎて役に立たない(笑)! あとソーマたんが……(涙)。こっそりセルゲイさんの幸せを応援します。
行き先は不明ですが主人公(せっさんではなくせっちゃん含め四人とも若いまま続投中)は報われるのが好きです。綺麗事も好きです。
しかし閉じとけって感じですよねすみません……。
ほぼオールキャラ。
世界は君のためだけにとあるのではないけど、君を泣かす全てのものから今遠ざけたいと思うよ、何て我が儘に。
池田がその知らせを受けたのは丁度ホテルを出て街の様子を取材に行くところだった。国連臨時総会の取材をJNNに申し入れたのは、この総会がマリナ・イスマイールの要請により招集されたからである。
安全保障理事会の決定を覆す事が出来る唯一の手段は、総会における5分の4の賛成である。長らく国連に君臨してきた安全保障理事会には各国から批判が集まっており、それを打開する為に約1世紀前からこの制度が導入された。だが安全保障理事会の決議が否決されたことは始まって以来一度もない。正に絵に書いた餅、というところか。今回のマリナの動議も同じ道を辿るであろうことは想像に難くない。それでも行方を見届けたいと思ったのは一重にジャーナリストの勘だ、と言う他無い。
だが其れを凌駕する知らせが飛込んできたのはついさっきの事だった。見慣れぬ番号に出るのを躊躇したのは数秒。前に知り合った誰かからかも知れないと思い直し、通話ボタンを押した。
『池田さん、俺です』
その声には確かに聞き覚えがあり。JNNの同僚か、と池田は肩の力をふっと抜いた。何だ、と応じると、済みません、何も聞かずに国連の取材は残りのクルーに任せて今すぐカメラマンと二人で空港に向かってください、と何とも奇妙な要求がつきつけられた。
「お、おい……!」
『……詳しくはまた後で連絡します。……急いでください』
そこで電話はぷつりと切れた。ツー、ツー、と虚しい音が響き池田はやむをえず電話を切った。
「どうしたんすか、池田さん」
インタビューをする相手を探そうと街を見回していたアシスタント二人が池田の声に振り返った。機材を用意しようとしていたカメラマンも同じように池田を見る。池田はいや、と呟き、心を決めた。
「俺とお前に帰還命令が出た。……今すぐ戻って来い、だとさ。ああ、取材は残りのお前たちに一任する。しっかりやって欲しい。マリナ・イスマイールはこの時代の核になるかも知れん」
「池田さん……」
「……済まん、今はこれしか言えない。俺たちはジャーナリストだ。――つまりそういう事だ」
分かりました、とアシスタントの一人が頷いた。僕達に任せて下さい、と胸を叩いた彼らを頼もしく見つめながら池田は胸ポケットにさしたペンに触れた。いつか交差する道。誰と、誰が。
『……人革連の超人機関の位置と存在の証拠が送られてきました。――絹江さんのメールアドレスから』
絹江・クロスロード。今は寂莫の思いと共に浮かぶ名だ。直接は知らずとも、彼女の無念は誰もが知るところだった。そしてクロスロードの名が持つ意味も。池田さん、と、電話の向こうの声は呼び掛けてきた。デスクも俺も本物だって信じてます。――池田さん。
――剣が無くても世界は変えられますよね――。
ああ、と呟き、池田は名も知らないガンダムパイロットを見送った。思いの外若かった青年は、流した涙も、子供に追いすがられた背中も、いっそ神々しくさえあった。彼らにとって彼は確かに救世主だった。だが、その実稀代の殺人者でもあった。「戦争」における殺戮を正しく殺人と定義したならば。そして、たとえ剣が無くとも、ひとは闘うことが出来るのだ。それだけは決して忘れてはならない。
「皆さん、ご覧になりましたでしょうか。超人機関は現実に存在していました。獣にもとる残虐非道な行いを繰り返してきたとされるこの組織は、ですがたった今その姿を白日の元に晒し、囚われていた子供達は解放されたのです。他でもないソレスタルビーイングの手によって。私達は、世界を、今こそ正しく認識する必要があります。今のこの混迷は何も彼らが現れたからではない。そもそも内包されていた歪みなのです。それに立ち向かうために、私達には変革が迫られています――」
「戦う為に必ず剣が必要な訳ではありません。私達ジャーナリストの武器はペンであり情報そのものであり、真実であり――皆さんの、心、なのです」
「さあどうぞ、レディ」
舞踏会にエスコートするような優雅さでもってグラハムは会議場の扉を支えた。ダニエルズの娘はそれに恐縮しながらも慣れた仕草で中へと入った。ざわめきの溢れる会議場は二人が滑り込んだ事に何の注意も払わなかった。最後尾ならば座っても良いそうです、と先刻係員から得た情報を彼女に披露してグラハムはそちらへと彼女を促した。そのまま特段注目を浴びることなく彼らはそっと席に座った。
「私、このような場所に来るのは初めてです」
父はいつもこの方達と協力なさっているのですね、と恥ずかしそうに呟いて彼女はグラハムを見た。
「ええ、そうですよ」
僅かに微笑してグラハムが答える。嘘は決して言っていない。思惑通りに事が運んだことに感謝しているだけだ。
彼女はほう、と溜め息をつき辺りを見回している。
「我々には投票権はありませんが、じっくり見守る事に致しましょう」
グラハムは彼女に優しくそう言った。……世界の、うねりを。この目で。
「アレハンドロ様、もう間も無く国連総会が始まりますが」
「……小娘一人の戯言を退ける為の下らない会合か」
リボンズの言葉を興味なさそうにあしらってアレハンドロは溜め息をついた。彼の心は既にこの国連総会の後に、はせられていた。マリナの訴えは届かず、安全保障理事会の決定の通り国連軍は常設となるだろう。そして資金援助をした王家とコーナー家は発言権を強めることとなる。つまりは国連そのものを手中におさめることに繋がる。――悲願の成就、に。
「中継をご覧にならなくてよろしいのですか?」
「結果の分かりきった過程など無用の長物だよ」
自らのパソコンから顔をあげずにアレハンドロは答えた。そうですか、と、どんな顔でか、リボンズが言った。
「お嬢様、そろそろ国連総会が始まります」
「興味は無くてよ、紅龍」
わざわさテレビを消して王留美は囁いた。JNNが中継をすることはわかっている。心底興味が無いわけでもない。唯、紅龍の言う通りにしたくないと言う少女めいた残虐さを楽しむためだ。見たとて見ずとて結果に変化は無いのだからどちらでも構わない。
彼女の思惑通り紅龍は少し困った顔をした。其れで僅かばかり気が晴れた。命令と同じくらい忠告は嫌いだ。思い上がりも甚だしい。
わざわざ彼を部屋から追い出してから、留美はJNNの中継にチャンネルを合わせた。
淡々と滑り出すニュースは儀礼的ですらあった。ストラスブールの世界遺産の紹介に街頭インタビュー。工夫も何もない、つまらない番組だ。と、スタジオに主導権が移動したところで女性アナウンサーが不意に顔を厳しくした。
『番組の途中ですが、たった今臨時ニュースが入りました。只今より番組を緊急報道特集に切り替え、二元中継でお送りします。人革連の秘密組織、超人機関の存在がついに判明しました。先日ガンダムと交戦を繰り広げたモラリア基地跡に居を構えているとのことです。本情報は先頃惜しくも急逝した我が社の記者であった絹江・クロスロードの生前の調査より明らかになったものです。繰り返します、人革連の秘密組織である超人機関の存在及び位置がついに判明しました。現場の池田さん、お願いします』
「何ですって……!」
留美は覚えず叫んでいた。どうかなさいましたか、お嬢様、と、途端紅龍が駆け込んで来る。留美は自分に腹を立てながら静かにモニターを指差した。紅龍が目をしばたいて映像を見つめる。人革連と戦闘を繰り広げているのは、二機のガンダムであり、スメラギはこの作戦を告げては来なかったのだ。……予想外、と言う他無かった。何て苛々するのだろう、と留美は思った。何もかもが。
ピーリス中尉、といつものように肩書きつきで呼ぶ暇すら無かった。入院生活に嫌気がさしてきた彼の唯一に近い癒しは彼女の訪いであり、彼女は今日も彼の病室に顔を見せていた。ソーマ・ピーリス。若き人革連のエースである。
その彼女をソーマ、とファーストネームで呼んだのは、セルゲイが彼女に自分の養子にならないかと申し出てから初めての事だった。ソーマはエースだが、唯のエースではなかった。人革連の闇である超人機関につくられた言わば人工的なそれだったのだ。自分の配下にいるためか、彼女が順調に戦果をあげているためか、今のところ表だった差別のようなものは無かったが、いつどのような形で偏見や嫉妬が噴出するか分からない。その時ひとりになってしまうと泣いた彼女を守るには此れが一番良いと思ったのだ。自分には娘はいないから、と言うと彼女は瞬きをして少し考えさせて下さい、と口にした。構わない、と彼が応じて、彼女は一旦席を外した。其処に臨時ニュースが流れた。
「ソーマ!」
「いかがされました、中佐」
軍人らしい身のこなしで長い髪を翻したソーマが戻って来る。君の同胞達が解放された、とだけセルゲイは告げた。ソーマは眸を見開いて彼が指さす映像を見つめた。ガンダムの襲撃を受けた超人機関がその姿を全世界に晒していた。ソーマにはあの場所の嫌な思い出が無かったが(消されたのだろうとセルゲイは思っている)、人間らしさを取り戻すたびに其れが落とした影の深さに悩んでいるのは知っていた。超人機関は同じ人革連の人間として恥ずべき存在だった。いつか組織を壊滅出来ればと彼は願っていたが、まさかそれがガンダムのパイロットによって成し遂げられるとは――しかも人質救出作戦である――予想だにしなかった。
「――中佐……」
国境なき医師団の面々が子供達を連れてゆく。――ああ。
「私は、貴方の娘になる資格があるのでしょうか……」
その映像から目をそらさないままソーマはそう呟いた。セルゲイは目を細め、右腕を伸ばして彼女を引き寄せた。そしてその耳にそっと囁く。
「我が娘に課せられる決まりならばただひとつだけある。――其れは私を父と呼ぶことだけだ」
つづく。
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