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Author:水無瀬早生
まったりガンダム00を見守るツッコミ感想+健全二次創作ブログです。ティエリア、アレルヤ、ソーマ、グラハムあたりを贔屓。

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2009/10/23 (Fri) 09:01
リボンズ、ラスボス設定なら。47

リボンズが第二期ラスボスなら? ←最早疑問形ではない。ついに終わりましたがホラ、2010年の映画に続く気満々だったから……!最終話付近で勝手に超展開。 だらだら細々つづいてます。間が空きすぎですすみません……。
 
 この話の前提あらすじは0をご覧ください。
 
 
 
 行き先は不明ですが主人公(せっさんではなくせっちゃん含め四人とも若いまま続投中)は報われるのが好きです。綺麗事も好きです。
 しかし閉じとけって感じですよねすみません……。
 
 
 
ほぼオールキャラ。
 
 
 
 前を向く、故、見えなくなるその眸。ああけれど横顔は、そう雄弁に、語るのだ。僕達には未来があるのだと。
 
 
 
 ピーリスと言う名前はやがて失われる筈だった。新しい名字を手にする筈だった。スミルノフ、と言う。
 
(……)
 
 ソーマ・スミルノフ、と名前を胸の内で反芻して、そのくすぐったさに彼女は僅かに頬を緩めた。――わたしに家族が出来る。それは例えようもない喜びで、生まれてこのかた仮初にも『家族』と呼称出来たのはあの白い実験室の仲間以外居なかった彼女にとっては尚更だった。
 
 折良くここのところ彼女に出撃命令は出ていない。それは人革連が国連との距離の取り方を模索していたせいでもあるが、セルゲイが裏で手を回していたせいでもあった。だが彼女はその事を知らず、運が良いとだけ思いながら、自身の療養と言う名目で与えられた休暇の大半をセルゲイの見舞いに費やしていた。一日に一度病室を訪れるのは最早日課だった。そのたびに彼女は娘にしてください、と言えずに、ただただ毎日花を贈っていたが、セルゲイは呆れるでも急かすでもなく慈しむような目を彼女に向けた。それだけで息が出来なくなるくらい嬉しかったのに、娘になると言うことは此れとは比べようのない幸福で、それを思うと目眩がした。
 
「――お加減は如何ですか、お……中佐」
 
 今日も彼を父とは呼べず、躊躇いながら中佐と呼ぶ。セルゲイは昨日と同じように微かに笑いながら武骨な軍人の指を、人を殺めた事があるとは信じられない優しい指を、彼女の薄い肩へと伸ばした。
 
「折角の休みなのだから買い物にでも行ってはどうかな」
 
「……何処へ行けば良いのか分かりません」
 
 端的に彼女は答え、その後小さな声でご一緒して下されば、と呟いた。セルゲイは驚いたように彼女を見遣り、やがてもう一度微笑んだ。
 
「私も若い女性が好むような店は分からないが、では都合がつけば同行しよう」
 
 彼の「都合がつけば」は都合をつけるに等しいと知っていた彼女は顔を輝かせると、調査しておきます、と答えた。よろしく頼む、彼が返す。まるで作戦行動の時のようなやり取りにおかしくなって彼女はそっと笑った。それを見ていた彼が少し嬉しそうにしたから、彼女はもっともっと嬉しくなった。
 
 ――ああ、何て。
 
(何てわたしは幸せなんだろう)
 
 胸が震える。幸福過ぎて怖いくらいに。
 
 また来ます、と言って病室を後にし、歩きながらその余韻を楽しんでいたら、今度は頭が震えた。超兵として改造された脳が脳量子波を捉えたのだった。激痛に頭を押さえしゃがみこんだら、遠くで声が聞こえた。被験体番号で呼ばれるばかりだった彼女にソーマ・ピーリスと言う名を与えた者の声が。
 
 その声は確かに彼女を撃ち抜いた。たった今幸せでたまらなかった心はあっと言う間に奈落へ突き落とされた。何て、何て非道なのだ。何故運命はどれだけあがいても彼女を裏切ろうとするのだ。待って下さい、と哀願に似た叫びを創造主に投げ掛けると、相手は残酷にも笑いながら、ほんの少しの猶予を彼女に与えて去った。その恩恵に僅かに安堵しつつ、だがその後に確実に訪れる悲劇に彼女は絶望を覚えた。
 
(――私は)
 
(――私が)
 
 一体何をしたと言うのだ。何の科で被験体とされ何の罪で人殺しの機械となり何の罰で、この、やっと見つけた幸せから堕ちるしかない断崖に立たされることを決められたのだ。
 
 救われた筈の心は、どうして。
 
 知らぬ間にこぼれた涙を通りすがりの誰かが見とがめて大丈夫か、と声をかけてきた。大丈夫である訳がないのに慌ててそれを拭い、すみませんと彼女は返す。足早に通り過ぎて、誰にも見られない病院の中庭の隅で、側に立つ木の幹を詮なく幾度も幾度も拳で叩いた。
 
「中佐……!」
 
 何度考えてみてもセルゲイの方に恩義があり、セルゲイの方が高潔で、セルゲイの求める未来の方が彼女のみならず皆が幸せになれると言うのに、何故彼を選ぶことが出来ないのか。彼女が超兵一号としてあそこから抜け出す手助けをしたから、では説明できない、言いようのない畏れが彼女にはあった。
 
(その程度の才能じゃ君は永遠にそこから出られない)
 
(この前の被験体みたいに脱走しても捕まって処分が関の山だ。――ああ、死んだら出られるね)
 
『嫌……!』
 
(出してあげてもいいよ。その代わり――)
 
 初めて生まれた希望に、すがりつき、又一人成功すれば他の被験体の処分もどんどん延期されると聞かされ、あの日彼女はそれを受け容れた。お陰で次の日から彼女のグリア細胞は信じられない程に強化され、超兵一号と呼称されるようになった。けれど番号で呼ぶのは嫌いなんだ、とそのひとは呟き、彼女に「ソーマ・ピーリス」と言う名を与えた。はぎとられ諦めていたものがこんなにも彼女の基に戻って来た。夢だと思うくらいに。
 
 だが本当の「夢」の始まりは、彼女がセルゲイの部下として軍に配属された時だったのだ。
 
 声は彼女に問う。あそこにいたままでセルゲイ・スミルノフに会う確率がどれだけ有ったのかと。またもし出会っていたとしても今ほどの運動能力も何もなくMSを操ることすらおぼつかない本来の彼女のままで、幾ら人道派とは言え軍属のセルゲイがどれだけ興味を示すと思っているのかと。
 
 彼女は反論出来なかった。セルゲイを信じていないのではなく、自身の存在の揺らぎを痛感していたが故に。今彼女の価値を支えているのは超兵であると言うことだった。それが無くても。セルゲイはまだ彼女を娘にしてくれると言うのだろうか。
 
(――いいや、そうではない)
 
 気休め程度の猶予を活かしきる為に彼女はそろりと顔を上げた。この身など。この身など。
 
 考えろ、考えるんだ、と彼女は必死に己れを鼓舞した。中佐のために。彼の望む未来のために。そうしたら、浮かぶのはもう唯ひとつの名前しかなかった。彼女の階級では話すことすら許されないような、国連軍の至宝。稀代の天才戦術予報士にして、良識派として名高いカティ・マネキン大佐ならば。或いはこの難局を救ってくれるかも知れない。それには何とかストラスブールへの外出許可証を手に入れるか偽造するかするところから始めなければならない。それも迅速に。
 
 か細い、か細い糸に手を伸ばすように。いつ切れてしまうか分からないけれど、下は地獄ならば、何としても這い上がるのだ。絶望に飲み込まれては駄目だ、と己れを叱咤し彼女は頬を滑る涙を今度こそ綺麗に取り去った。もう新しい涙は落ちなかった。
 
(――お父、さん)
 
 本人の前では呼べない呼び方を唯胸の内だけで。
 
 
 
 つづく。
 
 
 

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