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Author:水無瀬早生
まったりガンダム00を見守るツッコミ感想+健全二次創作ブログです。ティエリア、アレルヤ、ソーマ、グラハムあたりを贔屓。

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2011/10/30 (Sun) 23:09
お知らせです。

 おうちパソから接続できたら更新情報を載せておきます(基本週末くらいで、大概ケータイから投稿していますが)。
 古いのは適宜削除。ツッコミ感想は、すべて第25話仕様になってます。
 そんなわけで、現在更新しているのはわたしが一番楽しい「リボンズラスボスの勝手に最終回付近」ばっかりですが、何かリクエストとかもしございましたら教えていただければと思いますー。
 (勝手ながら、女性向けカップリングはお受けできないです済みません……)
 勝手に最終回は絵描きを確保したので、製本したい夢が広がりました。
 
 10/26 格納庫をつくりました。取り敢えず「リボンズ、ラスボス設定なら。」こっそり最新の33まで拾いました!

 お休みの間も、勝手に最終回はつづけています。

テーマ : 機動戦士ガンダムOO - ジャンル : アニメ・コミック

2009/10/23 (Fri) 09:01
リボンズ、ラスボス設定なら。47

リボンズが第二期ラスボスなら? ←最早疑問形ではない。ついに終わりましたがホラ、2010年の映画に続く気満々だったから……!最終話付近で勝手に超展開。 だらだら細々つづいてます。間が空きすぎですすみません……。
 
 この話の前提あらすじは0をご覧ください。
 
 
 
 行き先は不明ですが主人公(せっさんではなくせっちゃん含め四人とも若いまま続投中)は報われるのが好きです。綺麗事も好きです。
 しかし閉じとけって感じですよねすみません……。
 
 
 
ほぼオールキャラ。
 
 
 
 前を向く、故、見えなくなるその眸。ああけれど横顔は、そう雄弁に、語るのだ。僕達には未来があるのだと。
 
 
 
 ピーリスと言う名前はやがて失われる筈だった。新しい名字を手にする筈だった。スミルノフ、と言う。
 
(……)
 
 ソーマ・スミルノフ、と名前を胸の内で反芻して、そのくすぐったさに彼女は僅かに頬を緩めた。――わたしに家族が出来る。それは例えようもない喜びで、生まれてこのかた仮初にも『家族』と呼称出来たのはあの白い実験室の仲間以外居なかった彼女にとっては尚更だった。
 
 折良くここのところ彼女に出撃命令は出ていない。それは人革連が国連との距離の取り方を模索していたせいでもあるが、セルゲイが裏で手を回していたせいでもあった。だが彼女はその事を知らず、運が良いとだけ思いながら、自身の療養と言う名目で与えられた休暇の大半をセルゲイの見舞いに費やしていた。一日に一度病室を訪れるのは最早日課だった。そのたびに彼女は娘にしてください、と言えずに、ただただ毎日花を贈っていたが、セルゲイは呆れるでも急かすでもなく慈しむような目を彼女に向けた。それだけで息が出来なくなるくらい嬉しかったのに、娘になると言うことは此れとは比べようのない幸福で、それを思うと目眩がした。
 
「――お加減は如何ですか、お……中佐」
 
 今日も彼を父とは呼べず、躊躇いながら中佐と呼ぶ。セルゲイは昨日と同じように微かに笑いながら武骨な軍人の指を、人を殺めた事があるとは信じられない優しい指を、彼女の薄い肩へと伸ばした。
 
「折角の休みなのだから買い物にでも行ってはどうかな」
 
「……何処へ行けば良いのか分かりません」
 
 端的に彼女は答え、その後小さな声でご一緒して下されば、と呟いた。セルゲイは驚いたように彼女を見遣り、やがてもう一度微笑んだ。
 
「私も若い女性が好むような店は分からないが、では都合がつけば同行しよう」
 
 彼の「都合がつけば」は都合をつけるに等しいと知っていた彼女は顔を輝かせると、調査しておきます、と答えた。よろしく頼む、彼が返す。まるで作戦行動の時のようなやり取りにおかしくなって彼女はそっと笑った。それを見ていた彼が少し嬉しそうにしたから、彼女はもっともっと嬉しくなった。
 
 ――ああ、何て。
 
(何てわたしは幸せなんだろう)
 
 胸が震える。幸福過ぎて怖いくらいに。
 
 また来ます、と言って病室を後にし、歩きながらその余韻を楽しんでいたら、今度は頭が震えた。超兵として改造された脳が脳量子波を捉えたのだった。激痛に頭を押さえしゃがみこんだら、遠くで声が聞こえた。被験体番号で呼ばれるばかりだった彼女にソーマ・ピーリスと言う名を与えた者の声が。
 
 その声は確かに彼女を撃ち抜いた。たった今幸せでたまらなかった心はあっと言う間に奈落へ突き落とされた。何て、何て非道なのだ。何故運命はどれだけあがいても彼女を裏切ろうとするのだ。待って下さい、と哀願に似た叫びを創造主に投げ掛けると、相手は残酷にも笑いながら、ほんの少しの猶予を彼女に与えて去った。その恩恵に僅かに安堵しつつ、だがその後に確実に訪れる悲劇に彼女は絶望を覚えた。
 
(――私は)
 
(――私が)
 
 一体何をしたと言うのだ。何の科で被験体とされ何の罪で人殺しの機械となり何の罰で、この、やっと見つけた幸せから堕ちるしかない断崖に立たされることを決められたのだ。
 
 救われた筈の心は、どうして。
 
 知らぬ間にこぼれた涙を通りすがりの誰かが見とがめて大丈夫か、と声をかけてきた。大丈夫である訳がないのに慌ててそれを拭い、すみませんと彼女は返す。足早に通り過ぎて、誰にも見られない病院の中庭の隅で、側に立つ木の幹を詮なく幾度も幾度も拳で叩いた。
 
「中佐……!」
 
 何度考えてみてもセルゲイの方に恩義があり、セルゲイの方が高潔で、セルゲイの求める未来の方が彼女のみならず皆が幸せになれると言うのに、何故彼を選ぶことが出来ないのか。彼女が超兵一号としてあそこから抜け出す手助けをしたから、では説明できない、言いようのない畏れが彼女にはあった。
 
(その程度の才能じゃ君は永遠にそこから出られない)
 
(この前の被験体みたいに脱走しても捕まって処分が関の山だ。――ああ、死んだら出られるね)
 
『嫌……!』
 
(出してあげてもいいよ。その代わり――)
 
 初めて生まれた希望に、すがりつき、又一人成功すれば他の被験体の処分もどんどん延期されると聞かされ、あの日彼女はそれを受け容れた。お陰で次の日から彼女のグリア細胞は信じられない程に強化され、超兵一号と呼称されるようになった。けれど番号で呼ぶのは嫌いなんだ、とそのひとは呟き、彼女に「ソーマ・ピーリス」と言う名を与えた。はぎとられ諦めていたものがこんなにも彼女の基に戻って来た。夢だと思うくらいに。
 
 だが本当の「夢」の始まりは、彼女がセルゲイの部下として軍に配属された時だったのだ。
 
 声は彼女に問う。あそこにいたままでセルゲイ・スミルノフに会う確率がどれだけ有ったのかと。またもし出会っていたとしても今ほどの運動能力も何もなくMSを操ることすらおぼつかない本来の彼女のままで、幾ら人道派とは言え軍属のセルゲイがどれだけ興味を示すと思っているのかと。
 
 彼女は反論出来なかった。セルゲイを信じていないのではなく、自身の存在の揺らぎを痛感していたが故に。今彼女の価値を支えているのは超兵であると言うことだった。それが無くても。セルゲイはまだ彼女を娘にしてくれると言うのだろうか。
 
(――いいや、そうではない)
 
 気休め程度の猶予を活かしきる為に彼女はそろりと顔を上げた。この身など。この身など。
 
 考えろ、考えるんだ、と彼女は必死に己れを鼓舞した。中佐のために。彼の望む未来のために。そうしたら、浮かぶのはもう唯ひとつの名前しかなかった。彼女の階級では話すことすら許されないような、国連軍の至宝。稀代の天才戦術予報士にして、良識派として名高いカティ・マネキン大佐ならば。或いはこの難局を救ってくれるかも知れない。それには何とかストラスブールへの外出許可証を手に入れるか偽造するかするところから始めなければならない。それも迅速に。
 
 か細い、か細い糸に手を伸ばすように。いつ切れてしまうか分からないけれど、下は地獄ならば、何としても這い上がるのだ。絶望に飲み込まれては駄目だ、と己れを叱咤し彼女は頬を滑る涙を今度こそ綺麗に取り去った。もう新しい涙は落ちなかった。
 
(――お父、さん)
 
 本人の前では呼べない呼び方を唯胸の内だけで。
 
 
 
 つづく。
 
 
 

2009/10/19 (Mon) 08:42
リボンズ、ラスボス設定なら。46

リボンズが第二期ラスボスなら? ←最早疑問形ではない。ついに終わりましたがホラ、2010年の映画に続く気満々だったから……!最終話付近で勝手に超展開。 だらだら細々つづいてます。間が空きすぎですすみません……。
 
 この話の前提あらすじは0をご覧ください。
 
 
 
 行き先は不明ですが主人公(せっさんではなくせっちゃん含め四人とも若いまま続投中)は報われるのが好きです。綺麗事も好きです。
 しかし閉じとけって感じですよねすみません……。
 
 
 
ほぼオールキャラ。
 
 
 
 前を向く、故、見えなくなるその眸。ああけれど横顔は、そう雄弁に、語るのだ。僕達には未来があるのだと。
 
 
 
 シーリン・バフティヤールがその知らせを受けたのは彼女が間も無く眠りにつこうとしていた頃だった。もう仲違いの振りは無意味だったから、彼女は堂々とマリナと同室のスイートに泊まり、何かと理由をつけてはベッドを交換した。勿論いざという時に身代わりになれるようにだ。マリナと同じ黒髪のウィッグをつけて寝ている事をマリナは知らないし、知らなくていい。
 
 外した眼鏡を引き出しにしまい、肩に舞う黒髪を整えたところで控え目に枕元の電話が鳴った。ディスプレイにはフロントからであることを示す文字が灯っている。
 
「――何かしら」
 
 少々の不機嫌さを隠そうともせずにシーリンは受話器を取った。恐縮したような声が申し訳ございません、と謝りながらマリナ姫に火急の用だと言う方が面会に見えております、と告げた。
 
「……」
 
 何処の誰だその無礼者は。眉をひそめてシーリンは溜め息をついたが、良く考えればこのホテルマンは今まで一度もこんなことはしなかったのだ。ならば相手は姫を上回る権力者か――或いは脅されてのことか。どちらにせよマリナは匿っておいた方が良い。偽名で密かに押さえてある別の部屋に移すべきか、と此処までを素早く考えてからシーリンはどなたかしら、と尋ねた。返された答えで懸念は前者である可能性が強くなったがまだ油断は出来ない。素早くウィッグを取り外し身だしなみを整えながらシーリンは十五分後にロビーでと約束した。
 
 
 
『ハレヴィ財団の顧問弁護士と言う方が是非ともマリナ姫にお目通り願いたいといらしております』
 
 ――無論IDは確認しております、と付け足されたところでシーリンはこのホテルが最近ハレヴィ財団系列のホテルチェーンに買収されたことを思い出した。つまりはスポンサーからの申し入れで、ホテルに断る権限など無かろう。しかし要件が思い浮かばない。
 
 取り急ぎシーリンは隣のマリナの寝室へと急ぎ、せわしなくノックを繰り返した。
 
「何方ですか?」
 
 シーリンが言い渡した通りマリナがそう尋ねる。私よ、と短く答えるとマリナは直ぐにシーリン、どうしたの、と呟いてドアを開けた。
 
「……ちょっと人に会ってくるわ。貴方は私が戻るまで2018に移ってて頂戴」
 
 そう告げれば見る間にマリナの顔が曇る。
 
「厭ね、念の為よ」
 
 それを吹き飛ばす為に殊更明るくシーリンはマリナの心配を杞憂だと笑い飛ばした。でも、とマリナが言いつのるのを、早くして時間が無いのよ、とぴしゃりとはねつけ、マリナの手を引いた。
 
「……分かったわ」
 
 納得はしていない風でしぶしぶとマリナは頷き、部屋を出る。――危ないことはしては駄目よ。――念の為だって言っているでしょう。
 
 何処か堂々巡りに話は回り、だがシーリンが身体を翻してエレベーターに向かったところで途切れた。ロビー階を示すLの文字が緩やかに光る。
 
 ――危ないことなんて、マリナを守るためなら何時だってする覚悟は出来ている。長らく続いた内戦で疲弊しきっている祖国を、戦争の道を歩もうとする世界を、救うためだ。国連総会の演説を聞いて心底思った、自分の選択は正しかったのだと。一ミリも間違っていなかったのだと。彼女は無力なお飾りの為政者ではない。周りを照らす光だ。
 
 エレベーターが止まった。静かに扉が開かれる。品のよいシャンデリアが明かりを映して揺らめいた。老舗中の老舗であるAEUのクリスタルメーカーを思い出してシーリンは目を細めた。正しくカットされたクリスタルは、照らす光を何十倍にもして周囲に振り撒く。
 
「……初めまして。お噂はかねがね拝聴しております」
 
 一人の老紳士がすっと歩み寄り、そう言ってシーリンの顔を見た。
 
 そしてそのままバーラウンジへと彼女を促した。シーリンは余裕を体現するためゆるりと笑みを浮かべたが、着席して適当な飲み物をオーダーしたところで、おもむろに切り出された台詞に思わず目を見開いた。
 
「お聞き及びかも知れませんが、先の『血の結婚式事件』によりハレヴィ家当主は代替わりしております。私は現当主のルイス様の命を受けマリナ様をお訪ねしました。……ルイス様は、ご自身の親族の殆どをあの事件で亡くされておりますため、人一倍平和を望んでおられます。ついては、相続された遺産でマリナ様をご援助差し上げたいと申されました。マリナ様が国連総会で話された未来を実現するには、金銭が必要な時もあるだろう、と。具体的な手段については相談させて頂ければと思いますが、ハレヴィ財団は総力をあげてマリナ様を支援する心積もりです」
 
「……」
 
 うっかりと瞠目してしまったのを微かに後悔しながらシーリンは本当ですか、と尋ねた。他に意図は。何もないと言うのか。
 
「――見返りに頂きたいものは唯一つです」
 
 ……ほら来た。うますぎる話は裏があるのだ。ある意味安堵の溜め息をついて、シーリンは何ですの、と言った。下らない願いならば幾らでも叶えてやる。そうでないなら騙し討ちにするまでだ。
 
 ルイス様は入院されておいでのため本日はいらしておりませんが、失礼で無ければ其れはこちらの電話でマリナ様に直接申し上げたいとのことです、と言いながら弁護士は形ばかり酒に口をつけた。水の入ったグラスとカクテルを何気無い動作で入れ替えてから、シーリンは立ち上がった。要求は何であれ話には嘘は無さそうだ。確かルイス・ハレヴィはマリナが先日見舞いに訪れた病院に入院していた筈だった。
 
「……分かりました」
 
 僅かに乾いた唇を舐める。賭けるしかあるまい。どの道何らかの手段でスポンサーを得なければならなかったのだから。弁護士が頷いて会計をボーイに頼んだ。
 
 
 
「……という話よ」
 
 マリナを事前に元のスイートへ呼び寄せてからシーリンは弁護士を案内し、事の次第を語って聞かせた。『血の結婚式』のくだりで悲しげな顔をしたマリナはだが続いた台詞には心底感動したそぶりを見せた。
 
「ありがとうございます……!」
 
 王族らしからぬ丁重さ――無論それが彼女の魅力のひとつだ――で深々と頭を下げ、マリナはそう感激を隠せない声で礼を述べた。やがて差し出された携帯端末を緊張した面持ちで受け取り顔を上げた。
 
 電波の向こうにいる人物を見て、マリナはああ、と嘆息したようだった。――あの時の貴方が。
 
『ひめさま!』
 
 そこに幼い声が飛び込んできて、マリナはまあ、と目を細めた。国連が救ったアザディスタンの少女だった。前に出ようとする少女をルイスがたしなめる。ごめんなさい、ルイスお姉ちゃん、と素直に謝って少女は下がった。その少女を微かに優しげな目で見てからルイスはマリナを見た。マリナもルイスを真正面から見つめる。
 
 斬り取られた腕を持ち愛しい人からの指輪を光らせてうつむいていた彼女が。
 
 苦しむ少女に為す術なく泣いていた彼女が。
 
(こんなに何も持たなかった私達が)
 
 思いだけを胸に抱き。
 
 その心さえあれば何でも出来るのだと、解き明かし証明するように。この世界にそれを刻むように。
 
『――あたしが欲しいのは』
 
 やがてルイスが口を開く。
 
 こくり、とマリナは唾を飲み込んだ。痛いほどの沈黙が訪れる。
 
『……ガンダムなんて要らない未来』
 
 ――ああ。
 
 文字通り亡国の少年の顔がマリナの脳裏によぎった。ガンダムが要らない未来。武力介入が不要な未来。……つまりは、平和、を。
 
『パパやママ達を奪ったあいつらをあたしは今も憎いと思うけど、もう止めたいの。赦したいの。――この子はガンダムが貴方を救ったから感謝したいって言ってた。経緯なんて関係ないって。今貴方を救ったから、もうそれだけでいい、って。……あたしは、あたしは』
 
 ――普通に暮らしたいの。前みたいに、じゃない、この子や他の沢山の人達も一緒に。その為に。
 
 言葉をつまらせたルイスに、マリナはええ、と頷いた。
 
「――分かりました。共に目指しましょう。約束します、決して、決して投げ出したりなどしないと。必ず実現させると」
 
 たった二人――否、三人か――の証人の前で彼女達の条約は成立した。リボンズ・アルマークが踏み出したのとは又違う道への小さな小さな一歩。
 
 
 
 つづく。
 
 
 

2009/09/14 (Mon) 09:00
リボンズ、ラスボス設定なら。45

リボンズが第二期ラスボスなら? ←最早疑問形ではない。ついに終わりましたがホラ、2010年の映画に続く気満々だったから……!最終話付近で勝手に超展開。 だらだら細々つづいてます。間が空きすぎです(本当にね!)。
 
 この話の前提あらすじは0をご覧ください。
 
 
 
 行き先は不明ですが主人公(せっさんではなくせっちゃん含め四人とも若いまま続投中)は報われるのが好きです。綺麗事も好きです。
 しかし閉じとけって感じですよねすみません……。
 
 
 
ほぼオールキャラ。
 
 
 
 前を向く、故、見えなくなるその眸。ああけれど横顔は、そう雄弁に、語るのだ。僕達には未来があるのだと。
 
 
 
 生きることは何かと思考したことはあるか。人生とは何かと思考したことはあるか。
 
(僕は常にその意味を求めている)
 
 狂い始めた歯車のように、世界を同じ場所へと引きずりながら。
 
 ただ生まれた生き物はヒトであれ虫けらであれ意味など本当は無くても良い。けれど自分は「ただ生まれた」わけではなく、またそれ故に理由を持ち合わせているから、意味を確かに有意味とするために、至高の存在として、人類を導くために生き続けている。
 
(何故僕は他者のための意味しか持たないのか)
 
 それも劣る誰かのための。持つ者の義務だとしたら、それは酷く傲慢で、かつ彼が持たないことに対する救いは何も無い。人生は何故。生命は何故。
 
 ひとつ動いた駒がひとつ仕事をこなし、ひとつ邪魔者が消えた。残りはみっつ、いや無数。その前に成し遂げるべきことがある。役割を演じること。
 
 彼は唇を引き締めると端末の向こうに話しかけた。――まだいいけど、見張りは怠らないように、ね。はい、と声ならぬ答えが戻ってくる。それに頷いてから電源を落とす。翻った白い服の裾が空気を孕んだ。ふわり、と。そして。
 
 扉を開けて、楽器を奏でるように優雅に、少々遅れまして申し訳ございません、と口にした。頭を下げていても僅かに空気が動くのを感じた。ざわめきと、やがて其れが静まるのと。此処に集う人間の中で、彼が気を払うのは唯一人で、他は彼にとっては与しやすい烏合の衆だった。顔を上げる。その唯一人が彼を真っ直ぐに見つめている。彼はカティ・マネキンの冷悧な瞳を真正面から受け止めつつ浅く微笑んだ。花が開くが如く。カティは表情を変えなかった。
 
「リボンズ・アルマークと申します。我が主人の代理で参りました」
 
 
 
 ――故アレハンドロ・コーナー氏には嫡子がおりません。婚約者であった王瑠美様とは入籍はされておらず、又王様も亡くなったため、相続人がいない状況です。従いまして、アレハンドロ家の全ての財産は故人の遺志を尊重し、国連に寄付させて頂きます。襲撃事件でうやむやになってしまいましたが、改めてマリナ・イスマイール姫の動議を否決し、どうか国連軍常設化のための資金としてお使い下さい。我々の敵はソレスタルビーイングです。彼等こそをこの世界から根絶するために、手を取ろうではありませんか。
 
 そう、彼が言うと、まばらな拍手が返ってきた。軍備増強には賛成だがアレハンドロと王への「警告」を恐れている故であることは折り込み済みだ。
 
「徒に拡大路線を走るのもどうかと思いますが」
 
 そして凛とした声が真っ向から反論するのも分かっていた。
 
「ならばテロ行為に屈しろと言うのですか」
 
 彼が返せば彼女はそうではありません、と首を振る。
 
「しかし戦争を拡大させると疲弊するのは我々も同じであり、ソレスタルビーイングが全て悪いと捉えるのも又疑問の余地があると言うことです」
 
「判断材料とすべきは目的の崇高さではなく手段の残忍さではないのですか。古来より為されてきた神の名の元の聖戦すら生け贄を奉れば否定されるではありませんか」
 
 彼と彼女以外誰も口を開かなくなった。彼はなおも続ける。
 
「……このテロ行為が始まってからの非戦闘員の死亡者数を数えたことがありますか」
 
「それは……」
 
 彼女が言葉につまる。
 
「少ないから良いとお考えですか。誰も死なない戦争など有り得ないとお考えですか。――しかし、少なくとも彼等は、ソレスタルビーイングがテロ行為を始めなければ死ぬことはなかった。生き物の死は全ての終わりです。他人の心の中で生きるなどそれこそ幻想に過ぎない。死んだ人間はどうやってその『生』を実感できると言うのです。……そして、私の主人はアレハンドロ様お一人でした。紅龍と言う男の主人は王様お一人でした。無論、意味はお分かりですよね。代わりは無い。唯の人間は人間を数で語ってはならないのです。――傲慢過ぎる」
 
 そこまで淀みなく続け、リボンズは静かに微笑んだ。
 
(唯の人間は)
 
 微かに見える選民思想に顔をしかめながらもカティは何も言えずに黙り込んだ。彼の言うことはある意味真実だったからだ。部下の一人がコックピットに妻の写真を貼っていたのを彼女は覚えている。ソレスタル・ビーイングのテロ行為に巻き込まれて亡くなったのだと言っていたことも。
 
 だが此処で大規模な国連軍を展開させれば又巻き込まれる人間が増えるのではないか? ――喉元まで出かかった疑問をカティは呑み込んだ。多分議論は巡るばかりだ。唯一の味方であるコーラサワーは舞い上がりながら大佐の仰る通りですと繰り返すばかりでいっそ叩き出したいくらい役に立たない。耳目を集めているのはリボンズばかりで、「不死身」の威光もアレハンドロと王の純然たる死のせいで霞んでしまっていた。……分が、悪すぎる。このままではその内ソレスタル・ビーイングと内通しているのでは、等と痛くも無い腹を探られる羽目になる。今国連軍には自分以上に優秀な戦術予報士はいない、と彼女は自負している。驕りでも何でもない事実だ。つまりその事は、彼女より早く、そして彼女より被害を少なく戦争を終えられる人間がいないということだった。ならば。譲るわけにはいかない。追い落とされるわけにはいかないのだ、この場所を。
 
「……仰る通り、国連総会にて諮る他無いでしょうね」
 
 嘆息してカティがそう呟く。形式を守り良心に賭ける他ない。それにもその通りです、とコーラサワーが同意し、酷く頭痛がした。
 
「では、再度総会を招集下さいますよう。私はその結果を持って主人の遺産をお渡しすることに致します」
 
 マリナ姫の動議が否決される前提でリボンズは言い。それに気付いたカティが表情を険しくしたのを見てとってからゆるりと微笑んだ。
 
 始まりの、一歩だ。
 
 
 
 つづく。

2009/07/08 (Wed) 09:13
リボンズ、ラスボス設定なら。44

リボンズが第二期ラスボスなら? ←最早疑問形ではない。ついに終わりましたがホラ、2010年の映画に続く気満々だったから……!最終話付近で勝手に超展開。 だらだら細々つづいてます。間が空きすぎです。
 
 この話の前提あらすじは0をご覧ください。
 
 
 
 行き先は不明ですが主人公(せっさんではなくせっちゃん含め四人とも若いまま続投中)は報われるのが好きです。綺麗事も好きです。
 しかし閉じとけって感じですよねすみません……。
 
 
 
ほぼオールキャラ。
 
 
 
 前を向く、故、見えなくなるその眸。ああけれど横顔は、そう雄弁に、語るのだ。僕達には未来があるのだと。
 
 
 
 ニュースで大々的に報道されたアレハンドロ・コーナーと王留美の死は幾多の陰謀説が囁かれたものの、いつしか緩やかに沈静化していった。確かにきな臭いこと限りなし、と言った事件だったが現実には此れが殺人事件であること以外何の証拠も見付からず、司法の裁きが届かぬ迷宮の奥へと消える様相を見せていた。
 
(徒な軍拡は此れで避けられるが……)
 
 カティ・マネキンはそうぐるぐると思いを巡らせていた。いくつかある陰謀説の中でカティ自身はそうと信じていないが一番流布しているのが「国連の軍備増強路線に対するソレスタルビーイングの報復」と言うものだった。殺された二人が為そうとしていたことを考えればその説はあながち的外れではないが、戦術予報士としては到底お奨めできる作戦ではない。己れがまごうかたなきテロリストであることを声高に主張するのみだ。唯でさえ世界の反感を買っている現在、全く得策ではない。
 
(――それに)
 
 JNNの報道がある。確認されているガンダムは緑のGN粒子を放つものが4体、赤の其れが3体。うち少なくとも一体ずつが大破もしくは深刻な損傷を受けている。残り全てが自由に動け、かつソレスタルビーイングの配下にあるとしたら、ストラスブールに何故一機(或いは二機)しか差し向けなかったのか。又何故あそこで同士討ちを始めたのか。グラハム・エーカーが異常な身体能力を有していなかったら、或いはカティが見込んだような男でなかったら、白いガンダムは機能を停止した上で捕えられていただろう。ガンダムはソレスタルビーイングの象徴であるのみならず、GNドライブの秘密が明かされた今も科学の粋を集めた傑作である。そのパーツは欠片すらも渡したくない筈だ。
 
 つまり、あの局面における最善の策は、持てる全ての力を持って白いガンダムを救うことである。それをせずにわざわざ戦力を分散させアレハンドロと王留美を殺害を実行する(この段階で最低二人必要だ)ことのメリットが不明である。今は誰もが二人と同じ目にあいたくないがために口を閉ざしており、カティもわざと何も言わないことで過剰な拡充は防がれているが、この事態は逆の方向にも利用できる。即ち、「非道な暴力に屈しない為に国連軍の権力を拡大させよう」と言う提案にだ。
 
「……」
 
 それにしても、とカティは溜め息をつきながら窓硝子に映った己れの姿を見て、僅かに曲がっていた帽子を直した。これから食えない御仁が幾多跳梁跋扈する作戦会議に出席せねばならない。自分が戦術予報士になったのは勝つためではない。誰よりも早く、誰よりも被害を最小限に、正義を持って戦争を終わらせる、ためだ。尽きる事なく物資を大量投入し物量に物を言わせれば、確かに勝つ確率は上昇するだろう。だが物資は有限であり長引けば長引くほど誰もが疲弊する。職業軍人とて例外ではない。故に戦術予報士が存在するのだ、とカティは考えている。又故にモビルスーツの一機もたしなみ程度にしか動かせない自分がここまで出世出来たのだ、戦術予報士と言う肩書きひとつきりで。
 
 そのことを誇りに思っている彼女は、国連軍にうごめく不穏な空気を何としても排除したいと考えていた。今日の会議はそういう意味でも大事だった。こんな時に「あれ」がいれば。無論其れはグラハムではなく――謀略に頭を巡らせるのではなく純粋に勝利のみを希求していると言う印象を周囲に与えたままにしておきたかったから軍の方向性を決めるような政治的な場に呼び出すのは時期尚早だ――いつもは煩いくらいにまとわりついてくる癖に最近は何故か余り見掛けない自称エースパイロットである。こちらにも火の粉がふりかかる恐れは多分にあり、獅子身中の虫になりかねないとは言えあの場の読めなさは特筆に値するものがある。毒を持って毒を制す、と言ったところか。エースパイロット云々は確実に自称であるがこと模擬戦に関しては実際かなりの勝率であり、「不死身」の称号はそろそろ揶喩を越えて伝説に近付きつつある。その「伝説」は密やかにお偉方の間でも流行りつつあったから、恐ろしいことに彼には発言権があるのだ。無論興味本意の上に成り立つ権利ではあるが。
 
(――何故今いないのだ)
 
 人生には抗うことの出来ない巡り合わせが確かに存在する。
 
 幾重にも織り重なる糸がたまさかくるりとめぐるように。
 
 そしてそれも本人の資質の内だ。ならば彼には、パトリック・コーラサワーにはその資質が欠けていると言うことか。そう考えたところで後ろからたーいさ、と間延びした呼び掛けが投げられた。無論気のせいだ(と思いたい)が頭痛がする。
 
「何処へ行っていたパトリック・コーラサワー」
 
 何処かくたびれたアストロスーツ姿で何故か吊っている腕に目線を落としながら殊更冷徹に言ってみても特段何の効果も得られないのはこの局面では歓迎すべき事なのか。
 
「アレ、大佐もしかして心配して下さってるんですか?! 大丈夫ですよ、こんなのどってことないです! なんたって『不死身のコーラサワー』ですから!」
 
 ひとつも噛み合わない返答は受け流す事にして、カティは、今すぐ着替えてくるようにと命じた。
 
「借りてくるのでも何でも良い。十分以内に制服を着用してくるように」
 
「分かりました!」
 
 何故そんなことを命令されたのかはまるきり分かっていない――と言うか何一つ説明していないのだからここは疑問に思うところだがそれすらなかった――風でコーラサワーがびしり、と敬礼をしながらいやにはきはきと返事をする。そのまま身体を翻して彼はカティの命に従うべく走り去って行った。そもそも何もかも違うのだから比べても何の意味も無いし軍人としてではなく人としてどちらが好ましく映るかと問われたら変わり者のそしりを受ける覚悟でカティは片方を選ぶが(カティはAEUのエースパイロットもかなりの変わり者であることを知らなかった)、それにしても何と思慮の浅いことか。だが先刻カティが自覚した通りそれは彼の唯一無二の長所でもあるのだった。
 
(まあ、良い)
 
 思う通りに進められれば何でも。
 
 きっかり十分後、コーラサワーは定められた制服を纏い現れた。上着を着るまでは難しかったらしく、肩からはおっている。カティはそれを無言で取ると三角巾を一旦外すよう促し、着せてやった。それから真っ直ぐにコーラサワーを見る。
 
「これから私の言う事には全て同意するように」
 
「は、はい」
 
 手に取るように分かる動揺を何故か微かに好ましく思いながらカティは思い立って眼鏡を外した。期待している、パトリック、と駄目押しでファーストネームを呼び、更に微笑んでみせる。コーラサワーははい、はい、としつこく返事を繰り返した。
 
 戦場など何処にでもある。僅かな油断が命取りになり、思わぬところで足元をすくわれる場所など。
 
 会議室に向かう廊下で一人の青年――いや、少年か――とすれちがった。軍服もスーツも着用しておらず、非道くこの場に似つかわしくない風のその人物の肩が、すれ違いざま微かにカティのそれに触れる。彼は顔を上げた。まるでヒトならぬもののように整った美しい顔(かんばせ)だった。
 
「――済みません」
 
 涼やかな声が静かに響く。
 
 いや、こちらこそ、とカティが応じると彼は艶やかに微笑んだ。
 
「ではまた後程、マネキン大佐」
 
「……!」
 
 カティが慌てて振り返るとその人物は携帯端末を手に誰かと会話を始めていた。
 
「ああ、僕だよ」
 
 低くも高くもない、楽器のような声。自分が知らなくて自分を知る人間などそれこそはいて捨てる程いる、とカティは思った。だから別に今の人物がカティを一方的に知っていようとも何ら問題はない。よくあることだ。
 
 気付けばコーラサワーがやけに神妙な顔をしていた。
 
「……大佐」
 
「何だ」
 
 何か心当たりがあるのかと思い発言を促してみれば、コーラサワーはとんでもないことを言い出した。
 
「まさか……今のヤツみたいのが大佐の好みじゃないですよね?!」
 
「……」
 
 心底答える気が失せてカティは黙ったまま目当てのドアの前に立った。
 
「あ、黙ってるって事はもしや……! 嘘ですよね、嘘だと言ってください大佐!!」
 
 煩くてドアが開けられない。
 
 仕方なくカティは溜め息まじりに違うから黙れ、と呟いた。コーラサワーは現金にもころりと態度を変えて頷いた。失敗したかも知れない、と胸の内で愚痴を溢しながら、彼女はドアを開けた。目下の戦場へ。
 
 
 
 つづく。
 
 
 

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